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海外トピックス
英科学専門誌「Nature」および全米科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービスなどから抜粋した記事、プレスリリースの要約記事を掲載しています。
掲載日: 2006.08.18
中国で起きたポリオ・アウトブレークの原因
 中国で2004年に起きたポリオのアウトブレークの原因が、ポリオの生ワクチンであることが分かったとする調査論文が「The Journal of Infectious Diseases」9月1日付号に掲載された。予防接種を受けていなかった子供が生ワクチンと同型のウイルスに感染したという。生ワクチンによるアウトブレークとしては5つ目のケース。

 北京などにいる中国の研究グループが行なった調査によれば、貴州省でポリオ症状を起こした7人の子供のうち6人から検出されたポリオウイルスが予防接種に使われている生ワクチンと同型(タイプ1)であったという。残る1人から検出されたウイルスはタイプ1とは同じではなかったが、その子供はタイプ1のウイルスに感染してもおかしくない環境で生活していたという。7人の子供たちが生活する周辺地域の予防接種率は72%と低く、ポリオ症状を起こした7人とも予防接種を受けていなかった。

 検出されたウイルスは、1年という短い期間で、感染しやすく、麻痺症状を起こすものに変異したこともわかった。これを受けて、同省や周辺地域で、直ちに5歳以下の子供の予防接種キャンペーンを徹底させたところ、同型のウイルス株は周辺地域でみられなくなったという。

 生ワクチンは、病原性がほとんどないポリオウイルス(弱毒ウイルス)をワクチンとして飲ませることで免疫をつくり、自然のポリオウイルスの侵入を防ぐ。しかし、生ワクチン接種を受けた人が副作用でポリオ症状を起こしたり、接種を受けた人から排出されたウイルスに感染する場合がある。

 この調査論文について、米国疾病予防管理センター(CDC)の関係者は、「貴州省のケースは生ワクチンから派生したウイルス株が、予防接種率の低い地域でアウトブレークを起こす可能性を示したが、封じ込めることも可能であることが確認された」とコメントしている。こうした副作用やリスクを抑えるため、世界保健機関(WHO)は、生ワクチンの使用停止を推進する方針を打ち出しているが、CDCのオレン・キュー博士は「生ワクチンのような副作用のない不活化ワクチンへの完全移行には、多大なコストがかかる。予防接種に係る方針を定める際には、医療の観点からだけでなく、その国の財政的な側面も考慮しなければならないだろう」と強調した。
First released 15 Aug 2006 @
テストステロンが少ない男性の死亡リスクは高い?
 男性ホルモンの一種「テストステロン」の血中濃度が正常値より低下した40歳以上の男性は、正常な人に比べて向こう4年の間に死亡する危険性が高くなることが分かったとする研究結果が米医師会報の「Archives of Internal Medicine」(8月14-28日付)に掲載された。

 女性の閉経時と異なり、男性の場合、性ホルモンは急激に低下することはなく、通常30歳を過ぎたあたりで年に約1.5%の割合で徐々に低下する。調査では、低下の幅が通常より大きい場合、死亡する危険性がどの程度異なるのかを調べた。

 調査を行なったのは、米退役軍人局プジェット・サウンド・ヘルスケア・システムとワシントン大学シアトル校の研究者ら。1994〜99年の間、40歳以上の退役軍人858名1人ひとりのテストステロンの血中濃度の1週間の推移を少なくとも2度測定。前の測定から次の測定までの期間は2年以上開けないようにした。測定後、4〜8年間の経過を調べ、測定結果と付き合わせた。

 調査では、対象者をテストステロン濃度別に「低い」「中間(測定した時期によって正常、低いレベルの両方が測定された)」「正常」の3グループに分け、経過観察中の死亡者数の割合を比べた。その結果、死亡者数の割合が「正常」(452名)で20.1%だったのに対し、「低い」グループ(166名)では34.9%と15ポイント近くも高かったという。中間レベル(240名)の死亡者の割合は24.6%だった。

 年齢やBMIといった他の死亡要因を除外しても、テストステロン濃度と死亡する危険性が連動していることに変わりはなかったという。テストステロン減の原因になる外傷や手術、重病による影響を除くため、経過観察期間に入って1年目で死亡した人を除いた解析も行なった。それでも、テストステロンが正常値より低下した人の死亡の危険性は68%もあったという。
First released 14 Aug 2006 @
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