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海外トピックス
英科学専門誌「Nature」および全米科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービスなどから抜粋した記事、プレスリリースの要約記事を掲載しています。
掲載日: 2006.02.24
がん治療にボトックスの有用性−ベルギー・ルーヴェン大学
 「ボトックス」の商品名で、しわ取りなど老化隠しの美容目的での利用が広く知られるボツリヌス菌A型毒素。ベルギーのルーヴェン大学(Universite de Louvain)の研究チームは、このボツリヌス菌をネズミの体内にできた腫瘍に投与して、腫瘍の細胞血管を一時的に弛緩させ、腫瘍内への抗がん剤の投入量や酸素供給量を増やすことで、化学療法や放射線治療の効果を高める実験に成功したと発表した。

 実験は、肝臓に腫瘍ができたネズミと線維肉腫のあるネズミを対象に実施。それぞれ、腫瘍の大きさが直径6mmに達した時点で、腫瘍にボツリヌス菌を投与。その後、3日間にわたり、腫瘍細胞の脈管と灌流の変化、そして、化学療法や放射線治療の効果を観察した。その結果、腫瘍への抗がん剤投入量や腫瘍への酸素供給量が増したことによる治療効果の向上で、腫瘍の成長が抑制されたことが確認できたという。

 がん治療としては、これまでに、腫瘍の血管の新生を防いで腫瘍細胞の成長に必要な栄養素を送るルートを断ち切り、腫瘍細胞の縮小や死滅を促す方法が有効との見方がある。ルーヴェン大学の実験は、これとはまったく逆の方法で治療効果を高める方法。

 実験を率いたベルナール・ガレ教授は、「化学療法や放射線治療に対するガン細胞の耐性が強まっている。このため、より多くの抗がん剤や放射線を効率的に作用させなければならなくなっている。そのためには、腫瘍の細胞血管を通じて、より多くの抗がん剤を主要に投与し、より多くの酸素を供給して放射線治療の効果を高める必要がある。血管の新生を防ぐと、これらの効果が薄らいでしまう」としている。今回、ネズミの実験で効果が確認されたため、今後はヒトの臨床試験につなげる考えだ。

  この実験結果をまとめた研究論文は「Clinical Cancer Research」(2006年2月15日号)に掲載された。
First released 15 Feb 2006 @
新生児へのカテーテル挿入時の鎮痛にモルヒネの併用を−カナダの研究チーム
 カナダの「The Hospital for Sick Children (SickKids)」の研究チームは、新生児への中心静脈カテーテルの挿入の際の鎮痛に、従来の局部麻酔だけではなく、モルヒネの併用に高い効果があることが認められたとする研究論文を発表した。 研究チームは、2000年6月〜2005年7月の5年間、集中治療室で治療を受けていた132人の新生児の表情の観察などを通じて、局部麻酔とモルヒネを用いた場合の鎮痛効果を比べた。その結果、局部麻酔では十分な鎮痛効果はみられず、モルヒネのみ、または、モルヒネと局部麻酔を併用した場合に、高い鎮痛効果が認められたという。

 同チームを率いたアンナ・タディオ教授は、「過去に我々が行なった調査で、新生児がカテーテル挿入の際に、従来考えられてきた以上の痛みを感じていることが分かっている。このため、痛みを効果的に、そして安全に緩和させる方法を見つける必要があると判断した。今回の調査では、従来の局部麻酔だけでは十分な鎮痛効果をあげられないということ、そして中枢神経から痛みを緩和する効果のあるモルヒネを用いたほうが効果が高いことがわかった」と述べた。

 カナダでは、新生児の10〜15%が早産や敗血症、先天異常などが原因で出生後もしばらく入院を余儀なくされているという。この際、新生児に治療薬の投与や栄養分の補給のために中心静脈カテーテルを挿入する場合がある。
First released 14 Feb 2006 @
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