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海外トピックス
英科学専門誌「Nature」および全米科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービスなどから抜粋した記事、プレスリリースの要約記事を掲載しています。
掲載日: 2005.12.22
ロシアの国民平均寿命は66歳、人口も激減へ
 ロシアの人口激減が指摘されて久しいが、英ロンドン大学インペリアル・カレッジ・タナカ・ビジネススクールは、向こう50年間で同国の人口はさらに3割減り、1億人になるとの予想を英誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)を通じて発表した。少子高齢化が進んでいることに加えて、男性を中心に非伝染病の罹患率・死亡率が高いためだ。このため、国民の平均寿命も近年になって短くなっており、現時点での平均寿命は66歳と日本に比べて16年も短いという。

 非伝染病の罹患率・死亡率が高い背景には、喫煙や飲酒、不健康な食生活によって健康を損ねているケースが目立つうえ、HIVなどの性感染症やC型肝炎、既存の治療薬に耐性を持つ結核の蔓延、交通網など社会基盤の未整備による事故などが横行し、国民が健康的な生活を送る基盤が失われていることが考えられるという。

 同ビジネススクールによれば、心臓疾患と糖尿病による国民の死亡で失われる経済コストだけで、2005年の国民総生産(GDP)の1%(約111億米ドル)を占める見通し。こうしたコストは今後も増加する可能性が高く、2015年には同様のコストが664億ドルとGDPの5%を占めることになるだろう、としている。

  国民の平均寿命は、日本以外では、欧州連合(EU)に比べて14年、米国に比べて12年も短い。男性の死亡率が高いのが特徴で、平均寿命の男女間で14年の開きがある。ロシアが属する主要8カ国(G8)では、平均寿命の男女格差は8年であり、これよりさらに6年もの開きがあることになる。また、地域による寿命格差も顕著という。

 同ビジネススクールのリファト・A・アトゥム氏は、非伝染病や事故は、国がリスク要因を除くために統制のとれた公衆衛生戦略を展開することで回避できるとして、ロシアは自国の公衆衛生基盤を早急に改革すべきであると強調した。

  また、ロシアは2006年に入り、G8を務めることになっている。アトゥム氏は、ロシアの国力の安定がG8の戦略にかなうならば、G8ならびにEU加盟各国がロシアの公衆衛生基盤の改善のために支援をしていく必要も出てくるだろう、とも述べた。
<関連サイト>
‘The health crisis in Russia’(BMJ)
First released 15 Dec 2005@
乳がんと夜間の人口光照射に関連性−米トマス・ジェファーソン大等
 米バセット・リサーチ・インスティテュートとトマス・ジェファーソン大学の研究チームは、先進国における乳がん発生率が発展途上国の5倍も高いのは、夜間に人口光を浴びる時間が長く、概日リズムに関係するホルモン「メラトニン」の分泌量が少ないためだとする研究論文を発表した。報告は「Cancer Research」誌12月1日号に掲載された。

 メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンの一種で、目の網膜が光を感じている間(例:昼間)は分泌量が減少し、感じない時間(例:夜間)は増えるとされる。研究チームでは、「メラトニンはリノール酸が腫瘍の成長を促進する作用を阻害する働きある」(デビッド・ブラスク氏)との仮説を立て、以下の実験を行なった。

 閉経前の12人の女性の血液を日中と夜間と時間を分けて採取。夜間の場合は完全な暗室で2時間過ごした後と、蛍光灯の光を1時間半浴びた後に採取した。採取した血液はそれぞれ、ネズミの体内に移したヒトの乳がん細胞に注入。採取したときの状態によって、それぞれの血液がどのように乳がん細胞に作用するかを比べた。

 その結果、夜間に完全な暗室で過ごした女性から採取した血液(メラトニン分泌量が多い)を注入された乳がん細胞の成長スピードは目立って遅かったという。一方、蛍光灯の光を浴びた女性の血液(メラトニン分泌量が少ない)を注入された乳がん細胞は、昼間に採取した血液を注入された細胞と同じぐらい成長が速かった。

 これにより、研究チームでは「メラトニンの分泌量、つまり光を浴びている時間とガン細胞の成長に関連性がある」との見方を強めたとしている。ブラスク氏は「先進国では、夜間に明るい電燈を照らした職場で働く人も多い。ガンの発生率を抑えるために、概日リズムを崩さないで済む電燈の開発や職場環境の整備などを重視する必要が出てくるだろう」と述べた。
First released 19 Dec 2005 @
乳幼児突然死症候群(SID)の原因に新仮説−英ケンブリッジ大学
 先進国では乳幼児の2000人に1人が乳幼児突然死症候群(SID)で死亡しているとされる。SIDの原因については諸説あり、未だ明確な答えはないが、英ケンブリッジ大学の研究チームが、25万人強の女性の出産暦データを基に、どのようなケースがもっともSIDを起こしやすいかを調査した。その結果、SIDで子供を亡くした女性の他の子供の体が小さい場合が多いということが分かったという。

 研究チームは、調査対象となった女性を(1)2人の子供を出産し、両方とも生存している、(2)SIDで最初の子供を亡くし、2番目の子供が生存している、(3)最初の子供は生存しており、2番目の子供をSIDで亡くした――という3つのケースに分けて、それぞれの違いを比較した。

 その結果、最初の子供をSIDで亡くした女性が次に産んだ子供は2〜3倍の確率で、通常または早産で産んだ子供の体より小さいことが判明したという。また、体の小さな第1子を出産した女性がその後産んだ子供をSIDで亡くす確率も高かったという。この結果から研究チームを率いたゴードン・スミス教授は「まだ、推測にしか過ぎないが、子供の体のサイズを左右する、例えば子宮の状態が原因であることも考えられる」との見方を示した。
First published online 16 Dec 2005 @
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