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海外トピックス
英科学専門誌「Nature」および全米科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービスなどから抜粋した記事、プレスリリースの要約記事を掲載しています。
掲載日: 2005.10.14
性別による行動の違いは脳が出発点――米行動神経科学センター
 米行動神経科学センター(CBN)とジョージア州立大学、ベルギーのリージ大学の研究チームは、環境によってメスからオスへ性転換する海水魚を使って、性転換による脳や生殖腺中の女性ホルモン生成成仲介酵素「アロマターゼ」のレベルや行動パターンの影響を調べた。その結果、性転換の課程では、生殖腺に関連した変化が出る前に、脳内のアロマターゼが減少。平行して行動パターンも攻撃的になったという。

 アロマターゼは、テストステロン(男性ホルモン)をエストロゲン(女性ホルモン)に転換する働きのある酵素。調査では、オスが少ないとメスが性転換して不足を補う性質を持つカタリナゴビー(bluebanded goby)を(1)オス、(2)メス、そして(3)オスに性転換しかけているメス、(3)転換オスの4つのグループに分け、それぞれの脳と生殖腺内のアロマターゼのレベルやアロマターゼの減少に伴う行動パターンの変化を調べた。

  結果を比較したところ、全グループの中でアロマターゼのレベルがもっとも低かったのはオスだけのグループ。オスへの性転換途上にあるグループでは転換の進行度合いに応じてこの酵素のレベルが低かった。さらに、性転換の初期段階においては、生殖腺のアロマターゼのレベルに変化が生じる前に、脳のアロマターゼのレベルが低くなったという。

  研究チームでは、これらの結果から、「性別による違いは生殖器よりも脳によって決められているといえる。人間の性別がどう決まるかについても、このことは当てはまるのではないだろうか」とみている。この調査報告は、英王立協会報誌B(Proceedings of the Royal Society B)のオンライン版に掲載された。
First released 10 Oct 2005 @
中国人の間で伝統医学からバイアグラへの転向進む?−米豪大学研究者
 中国では、関節炎や消化不良、通風、性的不能など、ありとあらゆる身体の不調の治療に漢方などの伝統医学を利用する人が多い。しかし、英科学専門誌ネイチャーのオンラインニュース「news@nature.com」が報じたところによると、米豪2つの大学の研究者が行なったアンケート調査で、性的不能治療分野では伝統医学から「バイアグラ」への転向が急速に進んでいることが判明したという。

  アンケートを実施したのは、豪ニュー・サウス・ウェールズ大の精神学者ビル・フォン・ヒッペル博士と米アラスカ大学のフランク・フォン・ヒッペル博士。香港で伝統医学による治療を受けている中国人256人(50〜76歳)に、これまでの伝統医学の利用状況や、現在の利用状況などについて尋ねた。その結果、関節炎や消化不良、通風については、全般に伝統医学による治療を継続する傾向が強かったが、性的不能治療については、伝統医学の利用が激減。同時にバイアグラへの転向が急速に進んでいる可能性があることが判明したという。

  両研究者は、バイアグラの普及と平行して、伝統医学における性的不能治療薬の原材料となるアザラシやタツノオトシゴなどの動物の捕獲も減少しているのではないかと指摘している。 
First released 9 Oct 2005 @
First published online 10 Oct 2005 @
アフリカの医療政策関係者は熱帯病治療にも目を−米英研究者ら訴え
 アフリカでは、住血吸虫症、睡眠病、トラコーマなどの熱帯病が蔓延、毎年数千万人の死者が出ている。エイズや結核、マラリアなど「三大感染症」に比べて注目されることの少ない熱帯病だが、英リバプール熱帯医学スクール(the Liverpool School of Tropical Medicine)のデビッド・モリノー教授ら3人の研究者は、熱帯病患者を減らすことが、各国の経済利益にかなうとして、抗寄生虫ウイルス剤など複数の熱帯病治療薬の一括供給を柱とする管理治療体制の構築を推奨する論文を「Plos Medicine」に寄稿した。

 モリノー教授と論文を共同執筆したのは、米ジョージ・ワシントン大学のホテツ教授、英ロンドン大学インペリアル・カレッジのフェンウィック教授の2人。経済利益にかなう理由としては、エイズや結核の治療薬に比べてはるかに安い治療薬で多くの人の健康を回復できる点をあげた。

  モリノー教授によれば、エイズ治療なら年間で一人頭最低200ドル、結核なら一回の発症につき200ドル、マラリアなら同様に7〜10ドルかかるところ、7種類の熱帯病を治療できる4種類の治療薬のセットは0.4ドルしか、かからないという。

  3教授らは論文の中で「社会の隅に追いやられた多くの貧しい人々が健康を回復できれば、貧困問題の解決にもつながるのではないだろうか」と強調。アフリカ各国の政策関係者やエコノミストに熱帯病の治療を早急に推進するよう呼びかけた。
First released 10 Oct 2005 @
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