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海外トピックス
 英科学専門誌「Nature」および全米科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービスなどから抜粋した記事、プレスリリースの要約記事を掲載しています。

掲載日: 2005.08.05
広範囲で進むインフルエンザ・ウイルスの遺伝子交換
 米オンライン生物学ジャーナル「PLoSバイオロジー」は、インフルエンザのウイルス株同士の遺伝子交換が、従来考えられているよりも、速いスピードと広い範囲で起きている可能性が高い、との米遺伝子研究所の分析結果を報じた。

 それによると、遺伝子研究所は、ニューヨーク州公衆衛生担当者が1999〜2004年の5年間で採取したA型インフルエンザ・ウイルス156株のゲノム配列の解析を通じて、複数のウイルス株が同時に様々な遺伝子交換をしている、との分析結果を出した。

 また、感染力の弱いウイルスでも遺伝子交換により感染力の強いウイルスに突然変異する可能性があることもわかったという。

 具体的には、2003〜2004年に流行した福建型インフルエンザは、前年流行したインフルエンザのウイルス株と、何年も存在しながら感染力が弱い、別のウイルス株との遺伝子交換による突然変異で生まれたものであることが判明したという。

 この分析結果を受けて、研究チームでは、「将来、流行する可能性のあるインフルエンザを特定するには、過去に流行したインフルエンザのウイルス株の遺伝子だけではなく、世界各地から様々なサンプルを集めて全ゲノム配列を解析する必要がある」との見方を強めている。米国立バイオテクノロジー情報センターのリップマン氏は「全体像がわかれば、予防に効果のあるワクチン開発に役立てることができるだろう」と述べた。
First released 25 July 2005 @
First published online 28 July 2005 @
看護師不足対策で各国が共同戦略−米医療政策研究学会
 米医療政策・研究学会アカデミーヘルスが7月にイタリアで開いた国外政策フォーラムでは、米、英、カナダ、インド、中国、フィリピンなどから有識者や政策関係者などが集まり、看護師の不足を解消するための国際共同戦略案を提示した。戦略案には、国ごとの看護師需要を測る国際指標の設置や、看護師の職業に関連した情報ネットワーク構築などが含まれる。

 看護師不足は、開発途上国のみならず、カナダや英国、オーストラリアでも問題化している。米国への流出が進んでいるためだが、その米国でも看護師不足は今後さらに進むと予想されている。このままでは、「医療を提供するうえで重要な役割を担う看護師が不足し、医療の質の低下につながる」として、フォーラムでは、国際的な協力体制を構築する必要があるとの認識で一致した。

7月のフォーラムに出席した関係者 国際的な共同戦略としてフォーラムが提案したのは、(1)看護師の全人口比率や国外への流出(または国外からの流入)人数、対応しなければならない疾患の規模・重軽度等に基づいて、看護師をどの程度増強する必要があるのか、また、国際的な支援の必要性の有無等を測る国際指標「Global Health and Nursing Equity Index」の設置、(2)看護師の仕事内容に関する国際的な情報交換ネットワーク構築、(3)看護師の地位向上に向けた努力――の3点。

 アカデミーヘルスによれば、米国の看護師人口に占める外国籍看護師の割合はすでに12%に達している。しかし、米国では、2020年までに、さらに80万人の看護師を増強する必要があると予想され、米医療機関が看護師の人材を国外に求める傾向はさらに強まる可能性が高い。

 米国にいる外国籍医師・看護師の3割はカナダ、英国、オーストラリア出身。残る7割は英語圏のアフリカ諸国、カリブ諸島周辺国、東南アジア諸国などの開発途上国の出身だ。先進国である英国などでは、別の国から看護師を採用することで補填しているが、同様の対応をできない開発途上国にとって看護師不足はさらに深刻な問題だ。

 例えば、アフリカのサハラ砂漠周辺国では、世界医療機関(WHO)が人口10万に対して最低限必要としている10分の1(50人)の看護師、4分の1(5人)の医師しかいないという。エイズ禍による医療の需要ひっ迫もあり、この地域における看護師・医師の人材流出問題は喫緊に対応しなければならない問題と化している。

  一方、インド、中国、フィリピンについても、国外からの送金というメリットはあるものの、流出の規模が現在の水準を超えれば看護師不足問題が表面化するという。

 アカデミーヘルスは2006年2月にも引き続き政策関係者を集めたフォーラムをワシントンで開き、看護師不足解消のための具体策や、各国別の対応について話し合う予定。
関連サイト >> http://www.academyhealth.org/nhpc/foreignpolicy/index.htm
First released 29 July 2005@
子供の栄養失調を上腕囲で測定−ケニア医療研究センター
 ケニア医療研究センター、英オックスフォード大学、ロンドン大学などの研究者チームは、栄養不良で入院した子供が死に至ると予測される重度の栄養失調かどうかを測るには、上腕囲の測定も有効であるとの調査結果を米国医師会報誌で発表した。

 調査は、1999年4月〜2002年7月の間にケニアの地域病院に入院していた子供の入院患者8000人強を対象に実施。上腕囲中部位の円周(Mid upper arm circumference 、MUAC)を使って、死に至ると予測される重度の栄養失調かどうかを測ったところ、従来の身長と体重を使った測定方法とほぼ同じ正確さで結果を出すことができたという。

 アフリカのサハラ砂漠周辺国の子供の入院患者の死因の多くは、栄養失調によるものだという。世界保健機構(WHO)では、体重と身長を使った栄養失調の測定方法を勧めているが、同地域の病院の中には、この測定方法が必ずしも採用されていない。このため、栄養失調が進んでいても見過ごしていることがあるという。

 研究チームでは、上腕囲の測定は、「訓練さえ受ければ単純で、低コストで済む方法」として、「アフリカの地域病院に入院する1〜5歳の子供の栄養失調の度合いを測る方法として身長・体重を使った方法より、使いやすいかもしれない」との見方を示した。
関連サイト >> http://jama.ama-assn.org/cgi/content/short/294/5/591
First released 02 August 2005 @
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