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海外トピックス
 英科学専門誌「Nature」および全米科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービスなどから抜粋した記事、プレスリリースの要約記事を掲載しています。

掲載日: 2005.07.29
ポーランド医師の国外流出相次ぐ
 英医療専門誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)は、ポーランドから英国など他の欧州連合(EU)諸国への医師の流出が進んでいると報じた。ポーランドが2004年5月にEUに加盟して以来、この傾向は顕著で、ここ1年間だけでも英総合医学審議会(GMC)に登録したポーランド人医師は約500人と前年に比べて30倍も増えたという。英国以外では北欧諸国への流出が目立つという。

  BMJは、国外流出の原因について、ポーランドでは医師の給与が依然低水準で、多くは複数の医療機関での勤務を強いられていること、また、医師が専門分野で高度な医療技術を得るための環境が整っていないことなどに対する不満があるとしている。
First released 21 July 2005 @
レプチンと脳細胞の機能に関連性
 脂肪細胞から分泌されるホルモン「レプチン」の血中濃度が過剰に上昇すると、脳細胞の機能に影響を与えるとの研究報告が相次いでいるという。英ダンディー大学のジェニ・ハーベイ博士は7月半ば、グラスゴーで開催された英生化学協会の会議で、こうした研究報告について触れ、「レプチンと脳細胞機能の関連性を調べれば、高レプチン血症であることが多い肥満の人や糖尿病患者に起きる認知障害の原因を突き止める研究に役立つのではないか」と述べた。

 レプチンと脳細胞の関連性については、米テキサス大学サン・アントニオ校生物学部のマシュー・ウエイナー氏らのチームが、レプチンの分量によってニューロンの長期増強(Long Term Potentiation, LTP=反復刺激によってシナプスの伝導効率が長期にわたり、上昇する現象。記憶や学習の基本メカニズムとされる)の現象の亢進が左右されるとの研究結果を報告している。

 同チームは、まず、ネズミの脳の「海馬」(学習や記憶力に関係する脳組織)にレプチンを投与、ニューロンの長期増強の亢進を確認した。次に、試験皿に採ったネズミのニューロンを使って、通常の摂食で増える程度のレプチンとその100倍のレプチンを投与した場合で反応を比較した。その結果、通常の摂食で増える程度のレプチンを投与したニューロンの長期増強の現象が投与前に比べて3倍に膨らんだ一方で、100倍の量のレプチンを投与したニューロンには長期増強の亢進はみられなかったという。

 レプチンは、脳の視床下部を介して分泌され、食欲の抑制やエネルギー代謝を活性化させることにより、体脂肪量の調節をすると言われている。しかし、肥満の人の多くが高レプチン血症である点については解明が進んでいない。
First published online 20 July 2005 @
医師の最大の難関−治療に同意しない患者や家族への対応
 カナダのトロント大学生命倫理学共同センター(JCB)が、国内の生命倫理学者12人に、医療現場において医師が取り組まねばならない問題を、もっとも難しいと考えられるものから順に上位10位までランク付けをしてもらった。それによると、第1位に選ばれたのは「治療方法について患者本人や家族の同意を得られなかった場合の対応方法」だった。

  患者の病気の軽重、治療法の難易度にかかわらず、治療方法について患者や家族がすぐに合意せず、医師が説得しなければならないケースは多い。最近注目を集めた米フロリダ州のテリー・シャイボさんの尊厳死をめぐる家族の対立や論争にみられるように、医師は家族間の意見対立に巻き込まれ、患者の生死にかかわる難しい判断を迫られるリスクも負っている。

 JCBは、患者や家族から同意を得られない理由や背景、医療の現場で医師や患者、家族がどのような決断を迫られるのかについて調査を継続するとし、同時に、医師が適切な対応方法をとる環境を整えるための3つの提案を示した。

(1) 医療教育のすべての課程において、交渉や説得能力を培う教育プログラムを設置する。
(2) すべての医療機関は、医療サービスの提供者側と患者、患者の家族の間の意見対立を解決するための方針や対応措置を定める。
(3) 各医療機関が実際にどのように対応したかについての情報や反省点について一元的に情報収集・公開する全国レベルのネットワークを構築する。

 生命倫理学者が示した上位10位には、このほかに、入院や診療を受けるまでの待ち時間短縮、高齢者、慢性病患者などに対する医療サービス、プライマリケア医の不足、医療過誤、緩和医療、インフォームド・コンセント、臨床実験と患者の関係などの問題が含まれた。
First released 26 June 2005 @
一卵性双生児でも体質が違う理由
 生まれたときに同一の遺伝子を持つ一卵性双生児でも、長年の生活習慣や過ごした環境によって、体質に差が生じるのはなぜであろうか。スペイン国立がんセンターの研究チームは、40組の一卵性双生児の遺伝子メチル化の度合いを比べ、年齢が高くなるほど、また、離れて生活している期間が長いほど、双子同士の遺伝子メチル化の差異が大きくなる、との調査結果を発表した。

  同チームは、3歳から74歳まで40組の一卵性双生児を対象に遺伝子メチル化の度合いを比較した。遺伝子メチル化の差異が目立ったのは、そのうち十数組。特に28歳以上の双子同士の差異が顕著だったという。

 病気との関連性では、片方が遺伝子異常による糖尿病になっているのに対し、糖尿病ではない、もう一方の双子の遺伝子には同様の異常がみられない、というケースがあったという。生活習慣や過ごした環境が、遺伝子に何らかの化学作用を与える可能性があるといわれているが、今回の調査結果は、それを裏付けることにもなりそうだ。

 研究チームは「今回の調査結果は、どの程度の遺伝子メチル化が病気の要因になるのか、また、遺伝子メチル化の持つ役割がどんなものなのか調べるのに役立つだろう」(マネル・エステラー氏)としている。この調査結果をまとめた論文(マリオ・フラガ共著)は、全米科学アカデミー会報(PNAS)に掲載された。
First published online 4 July2005 @
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