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海外トピックス
 英科学専門誌「Nature」および全米科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサービスから抜粋した記事、プレスリリースの要約記事を掲載しています。

掲載日: 2005.07.15
米国の医師は一般人より信仰深い?
 米シカゴ大学が、米国の医師を対象に行ったアンケート調査で、回答者の76%が「神の存在を信じる」、59%が「死後の世界の存在を信じる」と答えたことがわかった。さらに「祭祀に参加することがある」とした回答者は90%に上った。成人の米国人を対象に行った一般社会調査(1998年)では、回答者の81%が「祭祀に参加することがある」と答えているが、医師の回答はこれを10ポイント近く上回った格好だ。

 医師に信仰する宗教を尋ねたところ、全人口に比べて、医師人口に占めるヒンズー教徒やユダヤ教徒の割合が大幅に大きいことも分かった。ヒンズー教徒の場合、医師人口に占める割合は5.3%と一般人口に占める割合(0.2%)の26倍も多かった。ユダヤ教徒が医師人口に占める割合は14.1%と一般の7倍、仏教徒は1.2%と6倍、イスラム教徒が2.7%と5倍あった。

 患者との対比でキリスト教徒の割合を調べたところ、医師人口に占めるキリスト教徒の割合は60%と患者(80%以上)を20ポイントも下回っていることも分かった。

 医療現場以外の「日々の生活においては、自分の信仰心が影響することはない」と答えた医師は、一般社会調査の回答者より多かった(医師61%、一般29%)ものの、「医療現場において、自分の信仰心が影響することがある」と回答した医師は55%にも上った。中でもキリスト教徒、モルモン教と仏教徒の医師は、「信仰心が影響する」と答える向きが多く、逆に、ヒンズー教徒とユダヤ教徒の間では少なかった。

 また、診療科目別では、家庭医や小児科医が信仰心や「神の助け」を拠り所にすることがあると答える傾向が強いのに対し、精神科医や放射線技師からはそのような回答はあまりみられなかった。

  調査を行なったシカゴ大学のファー・カーリン博士は、「医師がこれほど信仰心に篤いとは思わなかった」と述べるとともに、その理由について「もともと信仰心に篤く、科学的な素養と公益サービスへの関心がある人が、医療に興味を示す傾向にあるということではないか。傷ついた人を助けなければという気持ちは、宗教の伝統にも共鳴する」と分析している。

 アンケートの調査結果は、「the Journal of General Internal Medicine」(2005年7月号)に掲載された。
First released 22 June 2005 @
米研究所が「ロレンツォのオイル」の有効性を示す臨床研究結果発表
 米ケネディ・クリーガー・インスティテュート(米メリーランド州)は、ALD遺伝子に異常のある男子にオリーブ油と菜種油の成分でつくった「ロレンツォのオイル」と呼ばれる油を定期的に摂取させたところ、副腎白質ジストロフィ(X-ALD)の進行を抑える効果が確認できた、とする臨床研究結果を発表した。詳細は、米国医師会が発行する神経科専門誌「Archives of Neurology」(2005年7月号)に掲載された。

 研究では、ALD遺伝子に異常のある89人の男子(研究開始当時、全員7歳以下。研究前の頭部MRI診断の結果、異常はみられず、神経障害などの症状もなかった)を対象に「ロレンツォのオイル」を毎日一定量摂取させ、同時に食用油の摂取を控えさせた。これを7年続けた後、X-ALDの診断をしたところ、進行が止まっていた男子は60人強(全体の74%)に上ったという。

 X-ALDは、広範囲にわたる脱髄により各種の神経系の障害が発生することで知られる。進行すると知能・視力・聴力の低下などにはじまり、自律神経障害、四肢の障害などさまざまな障害を引き起こす。X-ALDの患者の脳や脊髄の白質と副腎で、極長鎖脂肪酸の増加がみられることも特徴だ。「ロレンツォのオイル」は、米国人のX-ALD患者、ロレンツォ・オドーネ君の両親が極長鎖脂肪酸の増加を抑える療法として独学で開発。このエピソードは、映画にもなっている。これまで、このオイルの有効性を科学的な方法で示した調査報告はなかった。

 同インスティテュートの神経遺伝学センターのヒューゴ・モーゼー理事は「ロレンツォのオイルの摂取療法が、X-ALDの抑止に高い有効性があることが示された」と述べるとともに、臨床研究以上に、徹底した療法を続ければ、X-ALDの進行を抑える可能性はさらに高まるだろう、との見方も示した。

 英科学誌ネイチャーのオンラインニュースサービス「news@nature.com」によると、イリノイ州の全米白質異栄養症基金のポーラ・ブラジール理事長は「ロレンツォのオイルの摂取を続けると血小板が減るという副作用があることも忘れてはならない」としながらも、「この研究結果はALD遺伝子に異常のある子供を持つ家族に大きな希望を与えるだろう」と評価したという。
First released 11 July 2005 @
First published online 11 July 2005 @
スキー場のイメージが花粉症の症状軽減に効果?−バーゼル大学病院
 スイスのバーゼル大学病院(The University Hospital Basel)心療内科部のウォルフガング・ラングヴィッツ教授と、その研究チームは、花粉症患者が海辺やスキー場など花粉の飛散とは縁遠い場所のイメージを頭の中に浮かべるだけで症状を軽減できる、との調査結果を出した。

  自己催眠の方法は、まず、トランスに近い状態になってから、海辺や雪原などの特定のイメージを浮かべることに集中する。自己催眠にかかるまでの時間は5分程で済むという。ラングヴィッツ教授らは、約40人の花粉症患者に自己催眠の訓練を受けさせ、花粉が飛散する季節に、自己催眠の前と後で患者の鼻腔の詰まり具合について問診、測定した。2年にわたり、この調査を実施したところ、自己催眠の後では、自己催眠にかかる前に比べて症状が3分の1も軽減されることが分かった。

 ラングヴィッツ博士は、「自己催眠が花粉症の症状軽減につながったとの調査結果は、手がかりに過ぎないが、副作用がないので試す価値はあると思う」と述べている。

  <関連サイト>
要約(米国立医学図書館 PubMed)
First published online 5 July 2005 @
未成熟の卵母細胞から胚発生
 ベルギーのゲント大学の研究チームは、未成熟の卵母細胞を体外で成熟させ、核を取り除いて他人の体細胞の核を移植して胚発生を進行させることに成功した。6月に開催された「第21回欧州ヒト生殖学会」(コペンハーゲン)で発表した。

 体外で成熟させた卵母細胞50個のうち8個を2分裂させることができたという。これを、およそ150に分裂させ、胚盤胞に育成できれば、どんな細胞にも成長できる胚性幹細胞(ES細胞)を採り出すことが可能になる。

 欧州ヒト生殖学会では、このほか、高度生殖医療(ART)と子供の染色体異常の関連性や、高齢出産が女性の健康に及ぼす影響などについての調査結果も発表された。
First published online 21 June 2005 @
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