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へぇーそうなんだ
東京・赤坂の寿司店主が食に関連する、ちょっとした豆知識を語ります。
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「ロレックスとサングラス」・「包丁」の話
○ロレックスとサングラス

 今回は私の修行時代のエピソードをお話します。

 二十年程前に、あるホテルの寿司屋で修行しているときの話です。カウンターにお客さんが二名ずつ四組、つまり八人座っていたと記憶しています。接客の際に、そのうち一人のお客さんの右腕を見たらロレックスの腕時計をしてたんです。うわー、いいなと思ったんですよ。

 でも、隣を見たら、その人もロレックス。その隣の人もロレックス。ほとんど全員がロレックスをしていたんです。それも、ダイヤが散りばめられているもの、プラチナ、男性用、女性用、大きいの小さいの−−と種類は様々。びっくりしました。「こんなお客様に接客できるなんて幸せだな。いつかは僕も」と思いつつ、、、、。

 さて、お次は、サンフランシスコのあるホテルに勤めているときの話です。そのホテルは二十五階建てで、最上階が全部和食堂でした。その一角に寿司カウンターがあったんです。

 その時はちょうどサマータイムで、日が暮れるのは毎日午後八時や九時でした。ですので、午後七時ぐらいですと、二十五階にあるお店に西日が差してくるわけですよ。職人は皆、西側にあるカウンターで作業していましたから、後ろの窓から背中と後頭部に日が差してくる。当然、背中と後頭部が暑くなります。

 で、カウンター越しに向かいに座っているお客さんを見たら、驚きました。全員が、サングラスをかけたまま、寿司を食べていたんですよ。寿司カウンターに座ったお客さんが全員サングラスをかけている。すごい光景だと思いませんか。

○庖丁

 庖丁がどうしてそう呼ばれるようになったか、知っていますか。

 昔、中国では、皇帝の食事のための厨房に入る料理人は試験で選んでいたそうなんです。あるとき、一人の料理人が皇帝の前で、牛一頭を捌(さば)いたんですね。あまりの鮮やかさにみんな惚れ惚れした。その人の名前を庖丁(ほうてい)と言ったんです。このお話は中国の古典「荘子」に出ています。

 そして、その名人の名前が日本に伝わり、料理に使う刃物のことを「庖丁(ほうちょう)」と呼ぶようになったのだと言います。

 庖丁にはいろんな種類があります。刺身を切るときに使うのが、刺身庖丁。これは、柳の葉のように細く、「柳葉庖丁」とも呼ばれています。

 また、刃が短くて厚いのが「出刃」。普通の庖丁だとおろしづらいので、大阪・堺の職人さんが、もっとおろしやすいようにと短くて、骨に当たっても刃こぼれしない庖丁を作ったんですね。出刃の名前の由来は、その職人さんが出っ歯だったからなんですって。「出っ歯庖丁」と命名され、それから、「出刃」と呼ばれるようになったんだそうです。

 庖丁は、食材を切る刃の部分は鋼で、それを鉄で挟んでいます。また、昔から鋼(はがね)というのは高価な素材でした。鋼だけで一本の庖丁をつくるのは難しかったこと、そして、値段を安くするのを理由に、このようにしたんですね。

 また、和包丁は片刃です。片刃で切ると、大根でも人参でも、切り口の艶やみずみずしさが全然違うんですよ。桜に剥いたりする時にも片刃のほうが剥きやすいんです。本当に堺の職人さん、そして、日本人のきめ細やかさ、探究心には、驚かされます。

 さて、終わりに「割烹」のこと。看板の店名の前に「割烹」と書いてある、お店がありますよね。「割烹」の「割」は中国では、「おろす」、「生」、「さばく」の意味らしいです。「烹」は「焼く」、「煮る」という火を通す料理のことを言うそうです。つまり、刺身も焼き物も揚げ物もありますよ、という意味なんですね。

掲載日:2006年11月10日
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