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(掲載日 2008.04.18)
ある厚生官僚の懺悔
      "後期高齢者医療制度の是非について"
投稿者 医療法人財団親幸会浜脇記念病院  理事長   田代幹雄
 厚労省は、薬害エイズ、薬害肝炎、年金問題等でたたきに叩かれ、心身ともに疲労困憊で知恵も回らない状況にある。その上、財務省、経済財政諮問会議等から「医療費を減らせ、減らせ」という強力な指示が出ている。

 厚労省に愛想を尽かした立派な官僚は既に辞めてしまっており、残った我々で、よい知恵を出そうとしているが、なかなか出てこず、他国の制度の一部を持ってきて、それを手直しするのがやっとの状態である。

 現場のこともよく知らないし、机上の空論といわれようと、我々にも生活があり、形を出すしかない。それが今回の「後期高齢者医療制度」である。

 我々ひとり一人は、血も涙もある普通の人間で鬼ではない。この「後期高齢者医療制度」は、お年寄りを幸せにしないどころか、不幸せにすることは目に見えてわかっている。自分たちの両親、祖父母さえも不幸せにする制度であり、いずれは自分たちにも降りかかってくる極めて残酷な医療制度であることは重々承知している。

 しかし、この程度のものを提案しないと、財務省、経済財政諮問会議等が許してくれないどころか、もっとひどい制度(混合診療をさらに進めて国民皆保険制度廃止)を提案してくる可能性があるのだ。

 自分たちの不甲斐なさに情けない気持ちで一杯だが、我々の発した信号を医師会の先生方はぜひ感じ取って上手くつぶしてほしい。

その信号が、「後期高齢者診療料」の内容である。

(1)今回は、包括1本でなく、今までの出来高も残した。

(2)包括をただ進めたいだけならば、誰でもすぐとれるように研修を要求しなかった。どうしても包括を選択するというのであれば、一定レベル以上の総合力を持った先生だけにやってほしいというのが、お年寄りに対する我々のせめてもの償いだ。

(3)核となる「後期高齢者診療料」の報酬を財務省も喜ぶ600点/月という極めて低い点数に設定した。我々が積極的に進めようと思えば、最初は数千点に設定し、手上げが思いどおりに進めば、次回改定時に報酬を極端に下げると共に包括1本で行く路線を作るというのが普通だが、それを今回は敢えてしなかった。

 ちなみに、2006年社会医療診療行為調査によれば、今回の包括項目(特定疾患療養管理料・検査・画像診断・処置料等)の医療費合計は7,716円であり、熟慮してもらうために、これより少ない6,000円とした。さらに、頻繁に行われる腹部エコー検査(530点)が算定できないように、算定できる検査料を550点以上に設定した。

(4)前記の(1)〜(3)の信号だけでも大部分の先生には十分とは思ったが、念を入れて、医師が一番嫌がる多くの書類作成を条件に加えた。また、この書類は個別指導等の際の重要なチェック項目になるため手上げの抑制になると考えた。

 我々としては、繰り返すが、お年寄りの幸せを常に願っており、冥土へ旅立つ際に「日本に生まれてよかった」と感じて頂ける社会作りのお手伝いをしたいと思って官僚になったが、なかなか理屈どおりにはいかないもので、お年寄りを苦しめる役割を担う結果となり大変後悔している。

 この医療制度の運営方法は良識ある先生方にお任せしたいと思っている。お年寄りを幸せにはできなくとも、せめて今以上の不幸せにしないように謹んでお願いしたい。
(厚生官僚の心理的葛藤を推測し、現場の医師の希望も込めて、代弁してみた。)
 
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