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(掲載日 2007.12.14)
医療と保険診療
投稿者  医療法人社団 青柳皮膚科医院 理事長 青柳俊
 国民皆保険制度がほぼ確立してから50年近くになり、医療提供サイドの充実と共に比較的小額の自己負担で医療にアクセスできる利点のため公平性のある医療提供が可能になってきている。

 医療提供サイドも必要な医療や最善の医療を経済的な理由で諦めなければならない問題が解消される一方、保険診療であるために色々な制限を含む規制を受けるようになり、「医療」と「保険診療」との乖離に悩まされることが多くなってきている。

 臨床現場における「医療」と「保険診療」の乖離や矛盾を肌で感じた上で、その乖離を解消し矛盾を解決するための役所や保険者との戦いが医師会活動の重要な柱になっていると思う。

 従来は税制や「薬価差」など「財政的なゆとり」のある中で、個々の医療機関の裁量と努力によって表面化しなかった面もあるが、色々な制度改変によって個々の医療機関での対応が極めて困難になってきている。

 また、医学の急速な進歩に伴い医学の社会的な応用である医療への導入の「時差」も指摘されている。 特に今後再生医療、生殖補助医療、遺伝子医療などの先端医療が臨床応用され始めることにより、ますます「時差」の問題は大きくなるだろう。

 科学的な根拠に基ずくデータの集積を促進するためには、医学研究者と臨床現場との橋渡しの仕組みやルールが早急に確立される必要がある。 

 先端医療を担う医療機関、特に特定機能病院は財政的な締め付けが厳しくなり、人員的な確保が難しくなり、従来のように臨床研究や臨床治験が機能しなくなってきている面も忘れてはならない。

 「寄付文化」が寝付かず、「謝礼文化」から脱していない日本において考えなければならないことは、兎角陰での評判の悪い「謝礼文化」を排除しオープンな形で各医療機関に「謝礼寄付基金」などを設立し、患者負担の軽減を図って新しい技術や新しい薬剤の臨床応用のために活用する方法も検討されるべきであろう。

 後ろ向きではなく前向きな議論を期待したいものである。

 いわゆる「混合診療」の問題は上記のような「医学」と「医療」、「医療」と「保険診療」との「乖離」や「時差」に集約されるように思われる。 患者や患者団体或いは患者を目の前にした医療者には悩ましい問題である。

 確かに「混合診療」の全面解除によって自己負担が大幅に低下し、新しい医療技術や新しい薬剤の恩恵を受けることが出来るメリットはあるだろう。

 しかし本来は「保険診療」の対象になるであろう新しい医療技術や新しい薬剤が「混合診療」の全面解除によって将来の「保険診療」への道が閉ざされる心配が残される。

 そのためルールとして認められた「混合診療」の制度(評価療養の制度)が導入され実績を上げつつあることを国民に説明し、理解してもらう努力が欠落しているように思われる。

 「混合診療」の全面解禁を主張する医療者はこのルールを認識している筈だが、彼らの議論の中には見当たらない。  新しい医療技術や新しい薬剤を「医療」や「保険診療」に導入するためには、医療者の努力があって初めて可能になると思われるが、彼等はどのような努力しているのだろうか?

 確かに個々に新しい医療技術を活用し、個々に新しい薬剤の使用が出来れば面倒なルールや仕組みに従う必要が無いメリットはあるだろう。 しかし、医療は公共性の強い側面を持っていることを忘れてはならない。

 医療・医療保険分野にビジネスチャンスを求めている財界・経済界におもねるような医療者は厳しく糾弾されるべきである。

 日本にも各種疾病を有する患者団体が結成されている。 しかしその面では先進国であるアメリカとは患者団体の活動趣旨が異なっているように感じている。

 日本においては「お上」に対する陳情団体と位置付けられることが多いが、アメリカにおいては積極的に疾病解明や新しい疾病治療に参画している。 新しい薬剤の臨床治験にも参加したり、臨床研究のための資料提供などにボランテアで参加している。

 彼等は個人の問題として捉えると同時に同じ疾病を有する仲間や将来の展望を含めての活動が主流であり、「お上」頼みの日本の患者団体とは異質である。  

 医学研究者の努力、医療者の努力は勿論だが、患者の積極的な参画などと共に、行政サイドの迅速で前向きな対応が求められる。
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