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(掲載日 2006.04.04)
動き出した財政審
投稿者  日本医療総合研究所 取締役社長 中村 十念
 財政制度審議会の動きが早い。通常4月に入ってから活動を開始することが多いが、今年は、既に3月27日に歳出合理化部会と財政構造改革部会の合同部会を開き、そこで国の一般会計に係る長期試算というのを出し、増税路線の頭出しをした。

 そこでは、いくつかの試算が示されたが、これが極めて難解であり、伏せられている数字もある。中間的なケース(名目成長率3%、長期金利4%)の粗筋は、おおよそ次のようなものである。(図表1〜4参照)。

図表1 財政審の長期試算(一般会計)

図表2 プライマリーバランス(2011年)

図表3 ▲13.1兆円削減の内訳

図表4 社会保障の姿(2011年度)

このままでいくと2011年度の税収と国債費を除いた歳出の差(これをプライマリーバランスの赤字という)は、13.1兆円に達する。このプライマリーバランスの赤字と国債費29.8兆円の合計42.9兆は、新たな公債の発行で帳尻を合わせなければならない。
その結果、2011年度の公債残高は678兆円となる。(2025年度では1,534兆円となる。)
(増税をしないで)2011年でプライマリーバランスを達成するためには。歳出の大幅なカット(つまり、▲13.1兆円の削減)をしなければならない。
社会保障も更なる削減が必要で、予想される2011年度一般会計の社会保障費24.1兆円から1.5兆円程度の削減が必要とされる。
医療で言えば、自己負担を現行の約1.3倍にする等の処置が必要である。

 「言うことを聞かなければ増税だ」という悪代官の脅し文句のようなものであるが、そう思って油断してはいけない。総論はともかく、各論を一人歩きさせるのが財務省の狙いのひとつだからだ。

 例えば「自己負担を原稿の約1.3倍」には、定額免責制のことが十分に意識されている。なぜなら、現在の自己負担率の3割は率的には限界である。これ以上あげるとなると保険の体をなさないし、保険システムからの離脱者が増える。負担率をあげないで自己負担額を上げるとなると定額免責以外に選択肢は考えられない。「自己負担1.3倍」を一人歩きさせると、定額免責制に行きつくという仕掛けである。

 医療側が日本医師会長選にあけくれている間にも、財務省の社会保険潰しと増税・家計負担増の戦略は着々と進んでいる。新年度の始まりに当たって、このことに注意しなくてはならない。
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