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(掲載日 2006.03.07)
韓国ES細胞捏造事件の闇の奥
(Heart of Darkness)
<連載2> 「アイ・ラブ・黄ウソク」の裏側
投稿者  澤 倫太郎
 日本医科大学生殖発達病態学・遺伝診療科 講師

 黄教授が伝えようとした「なにか」を探るために、この稿では、論文捏造疑惑事件をめぐる論争の過熱が、インターネットを通じて盛り上がったものであること、そして、そのことから「慮武鉉政権の突然の反米外交姿勢への豹変」に通じるものがある、という点を掘り下げてみたい。

 慮武鉉政権による突然の反米外交姿勢への豹変は、2002年6月13日にソウル郊外で起きた米軍軍用車両による2人の女子中学生轢殺事故に端を発する。慮武鉉候補は当時、同年12月の大統領選挙に向けたキャンペーンで、ハンナラ党の李会昌(イ・フェンチャン)候補に水をあけられ、苦戦していた。

 それだけに、この事故は、慮武鉉候補にとって、まさに「天からの贈り物」ともいえる出来事だった。

 慮武鉉候補陣営は、この機会を逃さなかった。6ヶ月も前に起こった、この米軍の事故を材料に、左翼系マスコミ主導による猛烈な反米キャンペーンを開始したのである。そして、李会昌候補を「事故隠しを助ける親米派」とするネガティブ・キャンペーンに打って出た。その結果の大勝利である。

  この選挙戦において、その効果を遺憾なく発揮したのはインターネットによるキャンペーンであった。中でも際立っていたのが、インターネット上から慮武鉉支持を熱狂的に唱える最大のボランティア団体「ノサモ」のキャンペーンであろう。ノサモは、そもそも「慮武鉉を愛する人々の集団:ムヒョン・ランハヌン・サラムドゥル・イム」の略である。これだけでもその熱烈な支持ぶりが伺えよう。

 一方で、李会昌候補は票数では優勢とはいえ、大法院(最高裁)長官というエリート経歴から、若者からの集票は難しかった。それだけに、ネットを通じたキャンペーンは、この間隙をつく形で、若者票を慮武鉉候補に向わせる追い風となったのである。

 そして、当初は選挙戦用のキャンペーンに過ぎなかったこの「反米・反日への流れ」は、慮武鉉候補が大勝利を収めた時点から制御不能の状態に陥る。暴走を始めた世論は、慮武鉉政権の「開かれたわが党:ヨルリン・ウリ・タン」をさらに後押しする形で、のちの「親日反民族行為真相究明特別法」という、他のアジア諸国には理解不能な法案の成立に向わせたのである。そして、極め付きは、米軍の半島撤退を含む米国の極東軍事戦略の大変換にまで発展したことであろう。

 野党代表時代の慮武鉉氏の外交姿勢は、左派志向とはいえ、対日・対米外交姿勢において一定の平衡感覚を保っていた。それが突如として、むき出しの反日・反米外交姿勢に転換した背景にはいったい何があったのであろうか――?

 そして、この背景をよくみると、慮武鉉大統領と黄教授の論文疑惑事件の過熱振りをつなぐ一本のラインが浮かび上がってくるのである。

  慮武鉉大統領は「商業高校を卒業し、苦学を重ねた末に司法試験に合格した庶民派の青年弁護士」のイメージと、その親しみやすい容貌で、もともと若者たちを中心とする大衆の間で人気が高かった。一介の弁護士が、2002年の大統領選で劇的な勝利を収め、一国の大統領にまで昇りつめる――。韓国国民はこういった苦労の末の成功譚が大好きである。

キャンペーンを展開したサイト そして、このパターンは、黄ウソク教授の「牛飼いの息子が世界のクローン王に昇りつめた」成功譚と国民の熱狂ぶりと見事なまでにシンクロしている。そして、この黄教授にも熱狂的な支持キャンペーンがインターネット上で展開された。そのキャンペーンを行った支持団体「アイ・ラブ・黄ウソク」の過熱振りは、自らのサイトを通じて研究・治療目的のための卵子寄贈に対する支援や、500名以上の女性支持者による「卵子提供同意」の意思表明を促したことでもおわかりいただけるだろう。

 そして、お気づきであろうか。黄教授の支持団体「アイ・ラブ・黄ウソク」は、「ノサモ」と全く同じ思想を下敷きにした「クローン」そのものであることを――。

 この「思想」こそ、「半島統一」をスローガンにする親北思想そのものであると言えよう。韓国政府が半島統一に急速に傾倒していることからも、わかるように、この親北思想を推進する集団は、いまや、Web空間を通じて世論を支配しているのである。

 次回は、「半島統一」思想が韓国研究者に落とす暗い影と、黄教授が伝えようとしたと考えられる「なにか」について、筆者自身のエピソードを交えながら真相に迫る。

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