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(掲載日 2006.01.24)
テーマ  時間体制も若手医師の犠牲の上に
投稿者  北海道在住 江原 朗
 1月18日のNHKによれば、へき地勤務や産科・小児科などの医師の足りない診療科での勤務経験を開業の条件とするよう国が検討しているとの事です。しかし、若手・中堅医師は楽をしたいから産科・小児科を回避しているのでしょうか。

  私は、元小児科医です。24時間いつでも診療を受け付ける体制を3人の小児科医(部長はほとんど免除、つまり、2人で24時間体制)で行うよう、診療部長、院長から厳命されていました。赤字を解消するため、患者確保に夜間診療を看板としたのです。私自身、年150日夜間の呼び出しがあり、小児科全体で年間1600人程度の時間外受診がありました。睡眠不足から、医療事故を起こすことや、過労から身体を壊す怖さから、労働基準監督署に救助を求めることにしました。私の同期の小児科医の1人は、40代前半で、脳血管疾患で社会生活が困難になっています。

  小児科医や産科医が減少する背景としては、これらの診療科が激務であることもあります。しかし、診療部長は外来だけで、病棟の患者も持たず、午後5時には自宅に帰ることができる一方で、下の医師だけが夜中も呼ばれているといった勤務体制の偏在も一因ではないでしょうか。上下関係の厳しい世界とはいえ、トップだけが定時勤務で他の医師が連日連夜勤務する制度は早晩崩れるでしょう。

  このように、管理職は夜間救急を免除され、下々の医師が奴隷待遇を受けるという医師間の勤務の偏在は、厳密な上下関係が保たれているうちは表面化してこないと思います。しかし、今後、労働法規が厳密に適応されるならば、管理職医師(小児科部長や産婦人科部長)が労働基準法違反で刑事罰を受ける時代も来るかもしれません。

 個々人の専門分野で6ヶ月ないしは1年程度開業前にへき地等に出向することはかまわないと思っています。問題は、へき地、産科・小児科などでの労働環境の是正です。こうした所への出向義務があっても、労働基準が守られるなら開業準備段階での経験の点で大賛成です。しかし、産科・小児科のように連日ないしは数日おきに36時間連続勤務や24時間拘束を行うのであれば断固本条文導入に反対すべきでしょう。
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