先見創意の会 (株)日本医療総合研究所 経営相談
MENU
オピニオン
過去に掲載されたオピニオン
今月のオピニオンのバックナンバー
過去に掲載されたオピニオンはこちらです。
 会員のみなさまからいただいた、ご意見・ご感想を掲載しております。コラムのページで扱ったテーマに対するご意見・ご感想も歓迎いたします。みなさまの積極的な投稿をお待ちしております。尚、オピニオンの投稿には入会登録が必要です。詳しくは「入会お申し込み」をご覧ください。

テーマ  個人情報保護法−直前対策
投稿者  医療法人 中央みなと会 理事長 斎藤 達也
 まもなく新しい年度が始まる。4月1日からは、いよいよ個人情報保護法が施行される。しかし、先の会員アンケートの結果からもわかるとおり、われわれの準備はとても十分とはいえない。それも無理からぬ面がある。この法律が十分こなれたものとはいえないし、どのように運用されるのかも不透明な部分も多いからである。手探り状態で進まざるを得ないが、無床診療所のような小規模医療機関によっては、大手が手探りする余裕すらないのではなかろうか。当院もその一つである。

 そこで私は大胆に割り切ることにした。まず、4月1日までに最低限必要なことだけを準備する。その後は法もこなれ、事例等も積み重なってくるだろうから、状況に合わせて徐々に整備を進めることにしたのである。準備するものは四項目とした。

 まず、患者さんにお知らせするための2種類の院内掲示(資料1)。一種類は個人情報の利用目的を告知するものと、もうひとつは個人情報を第三者に提供する場合についてのお知らせである。二つ目は診療記録等の開示申請書とそれに対する回答書である(資料2、3)。以上のものについては、末尾に現在推敲中のものを例示する。

 三つ目は個人情報保護責任者を任命することである。当院の場合、事務長を任命することとし、この責任者が苦情処理のキーマンとなることも明確にしようと考えている。また、防火責任者と同じように氏名の院内掲示も考えている。

 最後に職員の研修である。当ホームページの「SSネット勉強会」で提供されている材料や当院での作成物を利用して、3月中に一度勉強会を開催することを計画している。

 以上が私に出来る精一杯の対応である。会員の皆さんはどのようにお考えになっているだろうか。是非ご意見をお伺いしたい。
テーマ  混合診療問題について
執筆者  医療法人社団 青柳皮膚科医院 理事長 青柳俊
2005年3月8日掲載のコラム「混合診療問題を原則論からわかりやしく国民に示そう」
に対するご意見です。
>>コラム「混合診療問題を原則論からわかりやすく国民に示そう」へ
 保険診療と自由診療の本質的な違いについては、私もまったく異論はない。わが国の社会保障は、自助、共助、公助から成り立っており、社会連帯がキーワードともいえる。この基本的な仕組みを維持するのか、捨て去るのかが問われているといっても過言ではない。 この点が分かりやすく解説されており、非常に説得力のある説明になっている。

 浜田氏がコラムの中(>>コラムへ)で指摘された内容で、私の発言が引用されているので、少しその補足を試みたい。混合診療の議論をしているときに、相手によっては、その論点が異なることにしばしば遭遇する。“混合診療”の議論の出演者は、財務省、厚生労働省、国会議員、企業・企業経営者(保険者、医療関係株式会社、民間保険会社)、医師・医療機関(さまざまな立場)、被保険者(患者、健康な被保険者)であり、同床異夢のまま噛み合わない議論に終始することが多い。従って、出演者の分類をした上で、議論に臨むことが必要と思われる。

* * *

 勿論、各派に属するであろう人達は立場を明確にしないで、議論に臨むという高等戦術を駆使しているようであり、さらには、同じ派に属していてもその本来の目的には相違もあるようだ。

“混合診療”を求める人々を、大まかに5つの派に分類すると次の様になる。

1. 「もっとも派」
  • 主張内容:療養の給付にあたって、ルールに基づいて算定される医療費と実際にかかっている医療費の一致を求める人達。 両者の乖離分は医療機関からの持ち出しでまかなっているか、ルール違反承知で患者から徴収している。
  • 主張の理由:療養担当規則違反による罰則が科せられるのを回避するため。もしくは、医療機関の損失を防止するため。
  • 適切な対応策:療養担当規則等を早急に改定し、ルールを現実に一致させる。
2.「ちゃっかり派」
  • 主張内容:保険給付以外の療養を実施するにあたって、保険適応部分は保険からの給付を求める人達。 保険給付以外に実施する療養は、怪しげな民間療法から先端医療までと幅が広い。
  • 主張の理由:医師・医療機関は、患者に最善の療養を提供するということを理由にする。(しかし大部分は医師・医療機関が自分の優位性を知らしめるためのようなことが多い。)一部の金持ちの患者が、自分の利益だけを考えると、このような主張になる。民間保険会社は商機の拡大が動機。
  • 適切な対応策:適切かつ普遍性のある医療については、速やかに保険給付の対象にする仕組みをつくる。
3.「乱暴派」
  • 主張内容:風邪、腹痛等の軽微な疾病や薬剤の保険給付の撤廃など、公的保険給付の範囲縮小を求める人達。日本の医療保険制度は、医療技術の体系をセットで給付する現物給付制度であるが、そのことを理解できていない人が多い。
  • 主張の理由:財務省や御用学者は国庫負担の縮小、保険者や企業経営者は給付の縮小による負担の軽減、民間保険会社は商機の拡大、とそれぞれの目的で実現しようとしている。
  • 適切な対応策:疾病の重症化を招き、将来、医療費が増大する恐れがあることを認識させる必要がある。 しかし、「理解する意思がない人が多い」ので結果的に、無視せざるを得ない。
4.「確信派」
  • 主張内容:特定療養費制度を拡大して現物給付制度を骨抜きにし、現金給付制度化への突破口を開こうとする人達。
  • 主張の理由:財務省や一部の国会議員は国庫負担の縮小、厚生労働省は自己負担増額の自由度を確保、民間保険会社は商機の拡大を目指す。
  • 適切な対応策:真っ向から対峙しなければならないが、彼らは時として、未承認薬を使っている人が救済される等、論点をすり変える可能性があるので要注意。
5.「わからず派」
  • 主張内容:保険者から医療費の支払いを受けながら、指名料等、患者からもチップを貰おうとする人達。現物給付制度を理解せず、水商売並みの意識しか持たない医師・医療機関。
  • 主張の理由:医師・医療機関は安易な収入増を期待し、企業経営者は勝ち組の優位性(ランキング主義)を医療にも導入しようとしている。
  • 適切な対応策:この人達を納得させる方策は「現金給付制度化」しかないので放置する。
* * *

 最近、3大学(東大、京大、阪大)の要望書(>>要望書へ)を入手して読ませて頂いたが、彼らはどの派に属するのだろうか?「もっとも派」と「ちゃっかり派」、さらに「わからず派」が混在しているようだが、結果として、「確信派」に利用されてしまったようだ。 事務方がまとめた低レベルの要望書としかいえない内容で、国民皆保険制度を守り、問題解決の一翼を担おうとする意図は感じられない。

 ある大学の同窓会新聞に外科学の教授が同様の要望から混合診療解禁を主張しているが、解決策を単純に何でも混合診療に求めるのであれば、誰も口角泡を飛ばしての議論はしたくない。

 高度先進医療、高次医療の立ち遅れを解決するためにとの論点も見られるが、果たしてそうなのだろうか?新しい技術、新しい薬剤、新しい医療機器・医療材料の開発の源は日本なのだろうか?大部分はアメリカやヨーロッパから輸入学者や輸入業者によって持ち込まれるものだろう。
* * *
 医学の社会的応用が医療であり、その普遍化の結果が保険医療であるとすれば、それぞれのプロセスには時間が必要であり、そのタイムラグをいかに短縮するかが、医学研究者や臨床医の役割ではないだろうか。我々はこの努力を怠ってはいないだろうか。 確かに、基礎研究から臨床応用への移行プロセスが明確でなくなってきているが、実験・試行医療まで、保険診療を併用することには問題がある。その解決策として、国が積極的に関与する形で、研究費用をバックアップする体制と財源を考えるべきである。

 その他に筆者はひとつの提案をしたい。アメリカにおける非営利医療機関のマネージメントの最重要課題はいかに寄付による基金を充実させるかにあるといわれている。日本における「寄付文化」が未熟であると諦めず、基金の活用による財政問題解決も考えるべきである。「寄付文化」は未熟でも、わが国の「謝礼の文化」は脈脈と受け継がれている。 3大学は特にそのネームバリューと大都会立地の条件から、相当な「アンダーグラウンド」マネーのやり取りがあるはずである。有識者との非公式な会合の席で、しばしば批判の対象になっている問題でもある。

 3大学の病院長はこれらを透明化・基金化して、高次医療や試行的医療の財源として活用する意図はないのだろうか。無いものねだりのような子供じみた発想を止めて、とかく批判の対象となる「不透明」な「お金」のやり取りを「透明化」し、医療や医療技術の発展に寄与することにより国民の支持を受けるような発想の転換をして貰いたい。

 混合診療問題を広い視野から分析した論文、中村十念氏による「混合診療‐本当のところはどうなんだ?」が岩波書店の「世界」4月号に掲載されている。是非、一読を薦めたい。
医療保険制度等の規制緩和に関する要望書
平成16年11月22日

規制改革・民間開放推進会議
議長  宮内 義彦 殿

東京大学医学部附属病院長
永井 良三
京都大学医学部附属病院長
田中 紘一
大阪大学医学部附属病院長
荻原 俊男
(公印省略)

医療保険制度等の規制緩和に関する要望

 現在政府におかれては医療分野の規制緩和に関する検討が進められており、大きな社会的関心を集めております。
 私共3大学病院は、先端医療や高次医療の開発と実践において、わが国の先導的役割を果たして参りました。これらの医療は、個々の患者に最適な医療を提供するために必須であり、現在、健康保険や特定療養費制度等が部分的に適用されています。しかしながら、特定療養費制度の適用認定には長期間を要し、また、医療技術の進歩が遅れがちになるという問題もあります。さらには、健康保険が適用された場合でも、保険上の制約が多く、必要な人的・物的資源をまかなう経費が必ずしも保証されてないのが実情です。
 このようにわが国の先端医療や高次医療は困難な状況に陥っており、このままでは国民の生命と健康への影響が懸念されます。国民皆保険制度のもとでは、あらゆる医療が健康保険によって給付されるのが理想ですが、保険財源に限界がある以上、これらの医療を維持するためには、現行の健康保険と自己負担を組み合わせた新たな制度設計が必要と考えられます。新たな制度がない場合には、必要な高次医療の一部負担は認められず、全医療費が自己負担となります。
 自己負担のありかたについては慎重な検討が必要ですが、国民の生命を守り、患者の選択権に基づく医療が少なくとも特定機能病院において推進されるために、別紙に示すような特定療養制度の抜本的改革を含む規制緩和を要望いたします。
 何卒ご検討を賜りたく存じます。

戻る

別紙
I.医療保険制度に関する規制緩和(特定療養費制度の抜本的改革もしくは混合診療の導入)

1. 保健医療と自己負担を組み合わせた「高次医療制度」の新設
 人手や医療材料を多く要する高次医療について、薬事法、健康保険法で認められた範囲の療養については現物給付とするが、患者の要望と同意のもとに、診療機関がこれを超えて提供した部分については、患者の自己負担とする。自己負担のあり方については、例えば患者の収入を考慮した制度とする。
2. 高度先進医療の申請・認可から事後届出制への変更
 現行では症例(最低5例)の実績等を添えて厚生労働省に申請し、審査の後、認められることになっているが、これを事後届出制に変更する。
3. 諸外国で承認・使用されている医薬品や医療材料の使用
 諸外国で承認・使用されている医薬品や医療材料について、一定の条件の下で医療機関等が輸入し、使用できるようにする。
4. 治療終了後の未承認薬の使用
 臨床治験実施後、薬事法の承認が得られるまでの間について、当該治療薬が有効と認められ、かつ患者の要望がある場合は投与を可能とする。費用は基礎部分を保険でまかない、不足分は患者の合意の上で、参考価格に基づき患者負担とする。
5. 新たな治療法への保険の準用
 医療上必要であるが保険適用となっていない処置・手術等を、患者の要望と同意のもとに提供した場合、保険点数を準用して請求することを可能とする。

II. 医療制度以外のもの

1. 地方公共団体からの寄付受け入れの緩和 
 地方公共団体との連携を緊密に図り救急医療などの地域医療に貢献するため、地方財政再建促進特別措置法(地財法)による寄付受け入れ制限を廃止し、国立大学病院における寄付の受け入れを可能とする。
2. 国立大学病院における政府調達制度の適用除外
 医療機器や薬品等の早期納入・早期稼働と費用の計画的・効率的な執行による治療への適用と臨床研究の円滑な推進を図るため、国立大学病院における政府調達制度の適用を除外する。

以上

戻る
javascriptの使用をonにしてリロードしてください。
(C)2005-2006 shin-senken-soui no kai all rights reserved.