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コラム
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(掲載日 2010.08.10)

 永田町の「民度」が問われている。参院選で示された民意をきちんと理解できるかどうか、民意に沿った政治を実現できるかどうか。政権交代の幻想に振り回された国民は、与野党の動向に冷ややかな視線を送っている。

 7月の参院選で民主党が大敗、「衆参のねじれ」という厳しい現実を突きつけられた菅直人首相は、臨時国会での答弁ぶりを見てもすっかり意気消沈している。民主党内では小沢一郎前幹事長を支持するグループを中心に「反菅」「菅おろし」の機運が高まっており、9月1日告示、14日投開票の代表選に向けた多数派工作が、旧盆休み明けに本格化する見通しだ。

 だが、それでいいのか。参院選で有権者は菅政権だけでなく、鳩山前政権を含めた民主党政権の10カ月に「ノー」の審判を下した。とはいえ、自民党支持に振れたわけではない。同党の比例代表の得票が1172万票と、民主党の1525万票を353万票近く下回ったのが、それを証明している。みんなの党の躍進も、ゼロからの出発だったのだから当然だ。新党効果を少しも発揮できなかった、たちあがれ日本や新党改革、創新党はもって瞑すべしだ。

 民主党の敗因については、すでにさまざまざま論評がなされており、詳しい言及は避けるが、鳩山前政権の「衆院選マニフェスト絶対主義」の政権運営やブレ続けた米軍普天間飛行場移設への対応、菅首相の突然の消費増税発言とその後の混乱など、何度も繰り返した「定見なき迷走」の結果だ。背景には、自民党政権時代との「大きな変化」を有権者に印象付けようとした民主党政権の焦りがある。

 菅首相の続投を含め、民主党代表に誰が就任するかにかかわらず、衆参のねじれは解消されない。参院で否決されれば 予算や条約以外の法案はすべて成立せず、政権運営はたちどころに行き詰る。

 民主党の選択肢は限られている。政策ごとのパーシャル(部分)連合か、連立組み替えまたは政界再編による参院での多数派形成かである。菅首相周辺がパーシャル連合を模索しているのに対し、対抗馬擁立に動いている小沢氏らは、かつて自由党党首時代に目論んだ連立組み替え―政界再編を目指しているようだ。すでに自民党内の複数の実力者に接触したとの情報もある。

 確かに、連立組み替えによって参院で多数派を形成できれば、政権運営はかなり安定したものになる。しかし、与党内協議ですべてが決まり、国会を「法案可決機関」に貶める自自公、自公政権以来の政治手法は、有権者を政治から遠ざけただけでなく、官僚主導を助長してきたのではなかったか。昨年の衆院選で国民が政権交代を支持した要因のひとつになったことを忘れてはならない。

 参院選で示された民意はパーシャル連合だと思う。透明性を確保しながら、政策ごとに与野党が一致点を見いだす努力をする。そのためには、法案作成前の与野党協議も必要になろう。恐ろしく手間と時間と根気がいる作業ではあるが、それぐらいの努力は国会が国権の最高機関であり続けるためには当たり前のことだ。

--- 關田伸雄(ジャーナリスト)

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