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(掲載日 2010.08.03)

〜消費税収10兆円の内訳〜

 先般行われた参院選挙では、消費税増税が大きな話題になった。選挙が終わって、本格的に議論されるのか不透明な状況ではあるが、仮に今すぐに議論されないとしても、将来、消費税増税に関する議論は避けて通れないと思われる。

 今回は、統計データから消費税という税を眺めてみたい。

■統計データ

 国税庁ではホームページ等を通じて、税に関する統計情報を公表している。

 このコラムを執筆している時点では平成20年4月1日から平成21年3月31日までに終了した課税期間(消費税の計算対象期間)に関する統計データが出ている。

■納税申告件数

 消費税を申告し、納税している事業者の数、すなわち、消費税の納税申告件数は個人事業者が約142万件、法人が約195万件で合わせて約337万件である。

 ここで気になるのは、日本全体の個人事業者、株式会社等の法人のうち、どのくらいの割合の個人事業者、法人が消費税を納税しているのかということである。

 消費税が関係する事業所得や不動産所得で所得税を申告している個人事業者は約274万人、法人税を申告している法人は260万件である。

 事業所得や不動産所得により所得税を申告している個人事業者や法人税を申告している法人を日本全体の個人事業者、法人と仮定すると消費税を納税している事業者の割合は、個人事業者で2人に1人(51%)、法人では4件中3件(75%)である。

■納税申告による納税額

 では、消費税の税収はどうだろうか?

 前述した消費税の納税申告により納税された消費税は、個人事業者が4,400億円、法人が9.3兆円で合わせて9.7兆円である。

■還付申告件数

 消費税による税収は約10兆円であると言われているが、納税申告による納税額は9.3兆円なので、これを裏付ける形になっている。

 かと思うと実はそうではない。 前述した件数は、“納税”申告件数、すなわち、消費税を納めるという申告がされた件数である。

 一方で、税金には還付申告の仕組みがある。消費税についても、消費者から預かった消費税よりも仕入等で業者に支払った消費税が多い場合には、差額について還付申告を受けることができる(あくまでも預かった消費税と支払った消費税の差額が還付される仕組みであり、年収○○○円以下は還付という制度ではないことを申し添えておく)。

 還付申告件数は、最近の不景気等を反映してか、意外と件数が多い。 個人事業者で約4万件の還付申告があり、320億円が還付されている。法人でも12万件の還付申告があり2.4兆円が還付されている。

■最終的な税収

 納税申告による納税額から還付申告による還付額を差し引くと最終的な税収は7.3兆円となる。

 一般的に言われている消費税による税収10兆円と乖離することになるが、実は今まで示したデータは国税庁のデータ、すなわち国税に関するデータであり、地方税に関するデータは含まれていない。

 消費税は、国税分(消費税)と地方分(地方消費税)に分かれており、税率の5%は、国税分4%と地方税分1%の合計である。 実際の申告実務で、簡便的に国税と地方税を一括で申告しているだけなのである。すなわち、7.3兆円は国税分(税率4%相当額)の税収であり、地方税分の1.8兆(税率1%相当額)を加味する必要がある(それでも平成20年は10兆円を欠ける税収であった)。

■まとめ

 消費税による税収は、確かに10兆円相当額であるが、その内訳は、ざっくりといえば、国税分の7.5兆円と地方税分の2.5兆円である。

 消費税の議論をウオッチする場合、消費税は国税と地方税に区分があるということ、税率が引き上げられるとしてこの内訳がどうなるのか、はたまたこれらとは別に目的税の税率が加わるのかなどにも注目する必要があるといえる。

--- 鈴木克己(税理士)

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