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コラム
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(掲載日 2010.07.20)

 今回の民主党大敗の理由の中で、国民、経済界やエコノミスト、海外論調で共通していたのは「政策がブレた」ことで、「消費税」については必ずしも一致していなかった。

 ただ、消費税率引き上げが景気を良くするかどうかは別として、世界各国で「景気の腰折れ」や「景気の二番底」が懸念されている中では、リーマンショックから2年近く経過した今でも、何らかの景気対策が必要であることは間違いないだろう。

■財政の悪化が財政再建に寄与

 今回の大不況に対して各国政策当局は、異例の非伝統的な金融政策や、財政の大幅な悪化を省みないほどの景気対策を断行し、ようやく経済の崩壊を食い止めた。つまり政府が民間のリスクを大幅に肩代わりしたわけだ。

 ところで、仮に各国政府の財政が悪化しなかったら、換言すれば各国政府が危機対策を実施しなかったとしたら、リーマンショック後の世界の景気はどのようになっていただろうか。想定される悲惨な結果を考えると、逆説的だが、未曾有の大不況では、各国政府の積極的な財政悪化が経済を再生し、再生した経済が、財政健全化に寄与することになるのではないか。

■揺れている市場

 しかし、こうした見方は必ずしも各国政府のコンセンサスにはなっていないようだ。欧州では「市場の要請」を受けて「財政再建」が重要なテーマになっており、欧州各国政府は競って財政再建策を公表している。

 市場では、春ごろは「財政不安」を理由に、欧州各国を次々にターゲットにして株式、債券、為替売りを進めていた。これが欧州各国を「財政再建」に走らせたのだが、最近市場は一転して、財政再建策は景気回復を阻害するとして、景気の先行きを懸念している。

■政府や市場の認識は不十分

 「100年に一度」の大不況は現実に起きたことであり、通常の不況とはまったく異なることを、政府や市場は認識しなくてはならない。世界全体の景気は昨年春ごろを底に回復過程にあるものの、先進各国の経済は以前の成長軌道に戻っていないばかりか、経済規模さえもリーマンショック前の水準に戻っていない。また、今回のショックの根本的な原因である米国の住宅バブル崩壊はほとんど修復されておらず、政府が民間にリスクを戻せる状況にはなっていない。

 世界経済は「100年に一度」の大不況だが、各国政府の懸命な危機対策でかろうじて底抜けを免れている。だが1930年代の「大恐慌」の歴史を見ると、経済の正常化には追加的な政策の支援があっても、まだまだ長い時間がかかると考えてよいだろう。

--- 長谷川公敏((株)第一生命経済研究所 代表取締役社長)

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